旅の昔話。
イタリアのローマからインドのムンバイへ。
イエメンエアラインを使っての移動。
途中、イエメンで一泊のトランジット。
もちろん、航空会社持ちのホテル一泊。
旅をしていると、タダでホテルに泊まれることがあり、
しかも、食事付きだったりするのが嬉しかったりする。
ムンバイ行きの飛行機の時刻は夕方。
時間はたっぷりとあった。
ホテルの朝食でまばらな宿泊客の中に、
同じ東洋人系の伯父さん発見。
向こうもかなりこちらが気になったようで、
直ぐに話しかけて来てコーヒーをご一緒した。
伯父さんは韓国の方で、
当人曰く、聞けば直ぐに分かるほど有名な企業の社長さんとか…(マジ?)
とにかく、面白そうなので暇つぶしに話をしていると、
これからイエメンに住む韓国人の友人の所に行くのだが、
時間が有るのなら、私も一緒に行かないか?と誘ってくれた。
始めは、マジ?と思ったものの、
☆袖振る中も他生の縁☆
そんな感じで旅を続けた女アラ30!
現地の人からイエメンの面白話も聞きたいと、
同行することを承諾。
私たちは、タクシーに乗って韓国伯父さんのお友達の住む所まで出かけた。
サヌアの有名なオールドシティを抜け、
乾燥した大地が続き、
建物も大地も山も、
私の目にはちょっと生成りっぽい白の同色に写った。
30分ほど走っただろうか。
たどり着いた所は、
はっきりとした白い塀に囲まれ、セキュリティーがしっかりした門があった。
そこで、韓国伯父さんの友人が私たちを待っていてくれた。
中に入ると、外観とは違い何処か西洋風な家具も置かれていて、
プールもあるし、バーもあった。
街中ではほとんど見ることのなかった白人さんが沢山いた。
みんなサヌアで仕事をしながら住んでいる人たちで、
中には子供も2人いた。
不思議そうにあちこち見ている私に、
韓国伯父さんの友人は、
ここは、外国人専用のクラブだと説明してくれた。
クラブに入会している人や家族、友人など、
特定の人以外は入ることが出来ないエリアらしい。
ここでは、イエメンに住んでいる多くの外国人が
食事をしたりお酒を飲んで会話を楽しんだりしているのだそう。
どうりで物々しいセキュリティーがいたのに納得。
韓国伯父さんの友人は、
とても長い間こちらに住んでいて、
貿易の仕事をしてた。
家族はこちらには住んではいなく、単身なのだと言っていた。
イエメンの人はとても気性が荒く、
昔自分の会社のセキュリティーをしていた男が、
向えの絨毯屋さんの絨毯を盗んだとしてその店主に殺されたことがある。(…マジ?)
なんて、寒い話も聞かされた。
イエメンの男は子供の頃から短剣を腰に差している。
これ、本物?と聞くと、
どうやら本物だと聞いた…。
私が行ったイエメンは、
刀を差していた日本の幕末さながらの
アラビアンナイトの世界のようだった。
私たちは軽く食事をしながら、
いろいろな話をした。
すると、韓国伯父さんの友人はいきなり日本語を話だした。
なんと彼は日本語が話せたのだ!
そして私に、
彼がどうして自分が日本語が話せるのかを重い口を開いて語ってくれた。
時は韓国伯父さんの友人の子供時代まで遡った。
その頃は戦争のまっただ中で、日本兵に母国の言葉を奪われ、
学校では日本語の教育を受け、
日本語の唄を教わったと話してくれた。
「だから私は韓国の童謡をいまだに歌えない…」
と、語ってくれたのだ。
…とても重かった。
彼の言葉はとてもリアルに私の胸に飛び込んできて、
同じ日本人として、
彼にどう詫びればよいものか…正直分からなかった。
「戦争が終わってはじめて話した日本人だよ」
そう語ってくれた彼の脳裏には、
イエメンで突然彼の前に現れた日本人の私によって、
彼の頭の中でその頃の出来事が鮮明に思い出されたのかもしれない。
戦後50年を超えたあの頃でも、
嘘のように流暢な日本語を話していた。
彼の哀しい思い出。
突然目の前に現れた日本人の女によって、
多分、ずっと開けたことの無かった扉を、彼は開けてくれた。
彼にとっては、私と出会わなければ日本語を話すと言うが
一生なかったかも知れない。
戦後はじめて話した日本人。
彼の目には、戦争を知らない日本人の女は、
どんな風に見えていたのだろう…。
唯一の被爆国でもある日本。
けれど、その陰には日本がしてきた非人道的なこともあったことも忘れてはいけない。
旅をすると、
そこに色々な形で戦争の傷跡に出くわした。
そして、全てに言えることは、
戦争を想像してはいけない。
ジョンレノンが言っていたように…
Imagine there's no countries
It isn't hard to do
Nothing to kill or die for
And no religion too
Imagine all the people
Living life in peace
今日は終戦記念日。
ふと、あの日イエメンで出会った彼のことが蘇って来た。
どうしているかな?
お元気でいらっしゃりますように☆